猫とワタシ

ご供養物語

2014年6月 大日如来さまに導かれて始まった 広く深い故人のご供養のお話

この記事のみを表示する28番目 陽二郎さん

供養

 今朝は28番目の陽二郎さんのご供養をさせていただきました。


胡坐をかいて座っておられますが、まだ子供さんのように見受けられます。
すぐ後ろには、とても背の高い男性が経っておられます。

 お二人ご一緒ですか?

同じ悩みを抱えているようだから、一緒に供養してください

 陽二郎さんはそう仰いました。念のためお名前を伺うと、健一さんと仰いました。


 それでは、と最初は陽二郎さんの生きざまをみせていただきました。



 真っ白に降り積もった雪の道を黒い長靴を履いた一人の男性が歩いています。
なんだか 楽しそう・・・

 まっすぐに続く道を歩いていくと、ある町に着きました。
すると 男性-陽二郎さんは、おばあちゃんが店番をしているたばこ屋さんへ行きました。

 そして胸のポケットから一枚の写真を取り出すと、おばあちゃんに見せました。

 この女性をご存じありませんか?

 一瞬 おばあちゃんの顔が引きつりましたが、すぐに元の笑顔に戻ると 知らないねえ と明るく答えました。


 その後は、町のどの店で聞いても、出会った誰に尋ねても知らないの一点張りでした。

 陽二郎さんは疲れ果ててその町を出ました。


 陽二郎さんは母を知りません。父も知りません。
物心ついたときには、おばあちゃんと二人暮らしでした。親戚の人もいません。たった二人で生きていました。

 そのおばあちゃんに母親のことを訊ねたとき、この町の名前を教えてくれました。生きているとも死んでいるとも言わず、ただ この町の名前だけを教えてくれたのです。

 陽二郎さんがまだ小学校の低学年の頃のことです。
町の名前を聞き間違えたのかな とも思いましたが、最初に尋ねたたばこ屋のおばあちゃんの反応からすると、やっぱり間違いではないように思えます。

 でも 誰も教えてくれない・・・


 陽二郎さんは、前向きに生きることを日ごろから祖母に教えられていましたから、きっと知らなくてよいことなのだろう と考え、その町を出ました。

 祖母の死後、乏しい財産はすべて処分してこの町に賭けていましたが、どうやらこの町では自分を受け入れてくれそうにないな と感じましたから、次の町まで歩き その町で仕事を見つけ結婚もし、幸せに暮らしました。


 それでもやはり 気にかかっていたんだ
私の母親はどこにいるのか?
なぜ おばあちゃんは教えてくれなかったのか・・・

 では おばあちゃんに来ていただきましょう。


 現れた陽二郎さんのおばあちゃんは、とっても素敵な笑顔でした。

 おばあちゃん!
僕はおばあちゃんが言った町に出掛けたんだ

 するとおばあちゃんの顔がゆがみました。

 町の人の反応はおかしかった
知っているのに 知らない と言ったように僕には思えたんだ
なぜ?
僕はかあさんのことを知りたいだけだったのに・・・


 おばあちゃんは悲しそうな顔で、陽二郎さんの手を取りました。

 
 あの町へ行ってしまったんだね・・・
あの町は私が生まれて育った町だよ
その町で、私はある男性に養ってもらっていたんだよ

 何度か妊娠して、そのたびに堕ろせ と言われた
でも40過ぎて妊娠した時、もう 嫌だと思ったの
もう これ以上赤ん坊を殺すのは嫌だってね
それに 養われていることも もう限界だった
町の人はみんな知っていたから・・・

だから あの町を捨てたの
そして お前を産んだ・・・


 陽二郎さんはやっぱり・・・ という目でおばあちゃん いえ 母親を見ました。


 なぜ 言ってくれなかったの?

言えば、父親のことも話さなくてはいけなくなる
知らせたくなかった
いまでも 知らないはず・・・


 ここまで聞いて、陽二郎さんはすべて納得し母親を抱きしめました。

 言ってくれればよかったのに・・・
おばあちゃんがお母さんに変わっても、僕があなたを大好きなことに変わりはなかったよ

 母親は陽二郎さんに抱かれて 静かに泣きました。

ありがとう
本当にありがとう


 その後 母親は陽二郎さんの父親のことを少しずつ語り始めました。

名前は洋二 と言うそうです。町の有力者で、母親の両親と親しかったとか。
その両親が一緒に死んだ時から、世話になるようになったそうです。

 最初は娘のように接してくれていましたが、妻が亡くなるとお互いの感情が 親子の情のようなものから 男女の愛に変わったようです。

 しかし世間体もあり 籍を入れることはないまま、町の人の口に上るようになりました。

 子供を産まなければ噂を否定できる

ふたりはそんな風に考えたようです。でも 限界だった・・・

 だから 町を出て お前を産み 育てたんだよ


陽二郎さんの目にも 光るものがありました。

かあさん ありがとう
かあさんの子に生まれて、僕は幸せだ!

そう言って、また しっかりと抱きしめました。


 あの人のことを恨んだことはない
一緒に暮らして、確かに世間さまにはあれこれ噂されたけれど、私は何不自由なく暮らせた
何より 陽二郎を授かったんだからね


 しばらくは 木の下で手を繋いだまま陽二郎さんが子供のころの思い出話をしていました。
静かに それでも底抜けに明るい話ばかりでした。

 かあさんが幸せに生きたってことが よくわかったよ
もう 僕にも疑問に思うことは、もう 何ひとつなくなった
ありがとう


 そう言って ふたりは光の元へと昇って行きました。


 私の前には まだ背の高い男性が居られます。
どうしましょうか?
あなたの生きざまをみせていただいてよろしいですか?

そう聞きました。

いえ 今は止めておきます
陽二郎さんと同じ内容ではありませんでした
また 改めてお願いします


健一さんは そんな風に仰り、静かに部屋の後ろに移られました。
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