猫とワタシ

ご供養物語

2014年6月 大日如来さまに導かれて始まった 広く深い故人のご供養のお話

この記事のみを表示する54番目は ロクスケさん

供養

 54番目は ロクスケさんでした。

漢字ではなく、カタカナでのロクスケさん。
特に、六番目 という事ではありません。


雨風の激しい夜、小船に荷物を積んで必死で漕いでいる それがロクスケさんでした。
よく見ると、ひとりではなく年老いた男女も乗っています。

しかし必死に漕いでいるものの、小船は木の葉のように煽られて、やがてひっくり返りロクスケさんの姿は見えなくなりました。

翌朝、川下の河原でロクスケさんは うつ伏せの状態で見つかりました。


ロクスケさん どうなさいましたか?

私は長い間 自分を偽って生きてきました
記憶が無くなった振りをして、新たなひとりの人間として生きたのです

その為に、小船で一緒に逃げ出した両親を探すこともせず、姉が様子を知ってきたときにも知らんふりをしました

恥ずかしいことです
情けないことです

両親にも姉にも、妻や子供にも詫びを言いたい・・・


そうでしたか。
なぜ小船で逃げ出されたのですか?

貧乏な百姓でした
両親は生きることが下手な人でしたから、借金をこさえ その借金のカタに姉が売り飛ばされました
それでも暮しは楽になるどころか、私まで売られそうになったのです
年老いた両親を老いて、町に出ることは無理だと思いました
だから、村を逃げ出すことにしたのです

あいにく雨の降る夜でしたが、この日を逃すわけにはいかず・・・
結果 小船は沈み、両親の行方はわからないままです

そうでしたか・・・
あなたは助けられたのですね?

はい、でも住んでいた村や名前が知れるとまた村に連れ戻されます
そうなったら借金を返さなければいけません
そんなことは到底無理だった・・・

だから 自分が誰か わからないふりをしたのです

名前だけは、ロク と思い出したふりをしました
それは もしも見知った人に会った時、名前を呼ばれてうっかり振り返ったときにもばれない為です

おやおや ずいぶんと知恵を働かせたのですね

はい、なんとしても生きたかったから

そうでしたか

それで、お姉さんが来られた と仰いましたが?

ええ 数年経って、良い身なりをした女の人が私を訪ねてきましたが、それが姉でした
姉は置屋に売られたと聞いていましたが、その後良い出会いがあったようです

そのお姉さんにも?

はい 知らぬ存ぜぬで通しました
姉はなんとも言えない悲しそうな顔で 立ち去りました

そうでしたか・・・
それでは ご両親やお姉さんに来ていただきましょう


年老いたご夫婦と、身綺麗に支度された女性が来られました。
これまでのことをお話すると、ロクスケさんの手を取り皆さん 泣いておられました。

生きるためにはそうするしか なかったんだね

そう皆さんが納得されていました。

やがて 4人で手を繋いで、光の元へと還っていかれました。


ありがとうございます。

関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

secret