猫とワタシ

ご供養物語

2014年6月 大日如来さまに導かれて始まった 広く深い故人のご供養のお話

この記事のみを表示する50番目は二郎さん

供養

 50番目にご供養させていただいたのは、二郎さんです。
二郎さんは、さぶ とも呼ばれていましたし、いくつも名前をお持ちだったようです。

なんと呼ばれても良い と仰いましたが、そうもいきません。
では、ということで二郎さんと呼ばせていただくことにしました。


二郎さんは、温厚な町人という風情でした。
仕事は何を? と伺っても、あいまいな返事しかいただけません。
心残りは何ですか? と単刀直入に伺ってみました。


 二郎さんは30半ばあたりのころ、いつも立ち寄っていた飲み屋の酌婦とねんごろになり、所帯を持ったそうです。

特に働きに行く風でもないのですが、お金に不自由はしていません。
さりとて、豪勢に買い物をするでもなく、豪遊するわけでもなく。
なにで生計を立てているのだろう? と不思議な感覚でした。

どんな仕事をされていたのですか?

仕事 ですか?

少しずつ話を始めてくださいました。

なんですか あたしは品が良いというのか、
良いところの生まれに間違われることが何度もありましてね・・・

そこに目を付けた親分に拾われて、カモを見つけては親分に知らせ、あたしはさっさと逃げてしまう
そんな阿漕なことをやっていました

商家に入り婿の話もしたし
逆に 大阪の商家に嫁入りしないか と誘ったこともあったし・・・
旅の途中で路銀を盗まれた なんて話にも、みなさん 信じてくださってねぇ

おやおや いまで言う詐欺師の片棒を担いでいたようですね。

良いものを着せてもらって、美味しいものを食べさせてもらい、しかも懐もあたたかくなる
これが仕事だなんて思ったことは、一度もありゃしませんよ

そう言って笑いました。

でもね、女房をもらってからはそうもいかなくなったんです
何しろ家が出来ちまいましたからねぇ
留守をすることが難しくなってきた
それに あたしはもうそういうことから手を引きたかったんですよ

酌婦だろうがなんだろうが、あたしにとっては大事な女房ですからね
出来るだけ 一緒に居たい と思ったんです

そんなとき、兄貴分が仕事を持って会いに来ました
女房には気取られないようにしていたんですが、察してしまったようで・・・
どうしたもんか と思っているうちに、兄貴分がまたやって来て・・・

そこで二郎さんは口を閉じました。

察するに、恋女房を殺されてしまったようです。
その後の二郎さんは、旅に出てとある古寺でひとり暮らしながら、朝晩手を合わせていたそうです。

女房はあたしを赦してくれるでしょうか?

それが気に掛かる
そう仰います。

二郎さん ほかの人のことは気になりませんか?
余分なことですが、詐欺の手引きをしていたと仰るあなたは、ほかにも苦しめた人がいるのではないですか?
その方たちのことは、何も気になりませんか?

ご供養する身としては、余計なことなのですが聞いてみました。

ハッとされて、うつむいてしまわれました。
きちんと正座された膝の上に、ポツン ポツンと涙が落ちました。

確かに・・・
あたしは情報を引き出して、親分に知らせ 相手には良い面しか見せていませんでした
結果も特に教えてもらったわけではないので、気楽な商売だ と思ってもいたのです

でも・・・

一度だけ、騙した相手と会ってしまったことがあります
娘が大店の嫁になる と信じた親御さんが大枚はたいて嫁入り道具をこしらえて・・・
結局それが騙されたとわかると、残されたのは借金と娘だけ
親御さんは首をくくり、その娘さんは借金のカタに身売りしたんだと話してくれました

えっ お話されたんですか!

ええ、遊女となっていたその娘を買っちまいましたから・・・

抱くことは出来ませんでした
金だけ置いて 帰ってきましたよ

あたしがやっていたことは、そういうことだったんですねぇ
直接手を下したわけではないし、乱暴を働いたわけでもないので気が付かずにいました


そうでしたか、おわかりいただければそれで充分です
そう言って、木の実をお渡しし、あなたが騙した人たちにも食べてもらってください と伝えました。


一方 二郎さんの恋女房 名前を伺うと、こちらも 千代だったり ミヨだったりといくつも名前が出てきます。
結局 お勝さん と呼ばせていただくことにしました。

好いた腫れたの関係になるわけにはいかなかったのです・・・

二郎さんのしていたことをお伝えしたところ、お勝さんはそんな風に仰いました。

でもあたしもそろそろ 落ち着きたかった
優しい人だし、静かに暮らせれば それで良いと思っちまったんです

でも、そうはならなかった・・・
なにか 隠していることがある そう思っていました
あの人が先に逝っちまって、その後でいろいろ知らされるのは、御免被りたかった
だから 先に逝けたのはありがたいと思っていました

二郎さんに来ていただき、お勝さんの言葉を伝えると二郎さんはたいそう喜びました。

そう言ってくれて 本当にありがたい
あたしのせいで お前を早死にさせてしまったと後悔していたんだよ

二郎さんはお勝さんの手を取って、涙を流しました。

心残りが無くなった二郎さんは、すぐにでも光の元へと還ろうとしています。

先にいってくださいな すぐに後を追いますから・・・


お勝さんは二郎さんの姿が見えなくなると、ふっと肩の力を抜きそれまでよりもくだけた風になりました。

あの人には申し訳ないと思いますがね・・・

えっ?

いえね、別にあの人が悪くてあたしが殺されたわけではないんです

はっ?

あははっ あたしも同じ稼業だったんですよ


あたしを斬ったのは、あたしの仲間です
あの人は関係ありゃしない
足抜けをしようとしたから 逃げようとしたから斬られちまったんです

何も知らずに あの人は自分を責めていたんですねぇ
あたしは何も知られずに 先に逝っちまったことをやれやれ と思っていたのに・・・

なんだか 申し訳ないことをしちまいましたね

そう言って少し しんみりされました。

聞いてましたよ
ですから、木の実はたくさん振り撒きました

こんなあたしですからねぇ
流石にあの人と一緒に還るというのは、違う と思いましてね
でも もう良いでしょう

還らせていただきます


そう宣言されると、白い龍にのってぐんぐん天に昇って行かれました。


ありがとうございます(^人^)

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