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猫とワタシ

ご供養物語

2014年6月 大日如来さまに導かれて始まった 広く深い故人のご供養のお話

この記事のみを表示する16番目は朝吉さん

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2014年8月7日 ブログより

さてさて、今日ご供養させていただいたのは、朝吉さん。
左足が不自由な方で、前に出て来られるのに時間がかかりました。

炭問屋さんの使用人だったそうです。子供のころから 少し足を引きずって歩いていたそうですが、今は膝から下がありません。
もう ここで 残酷なシーンが見えてきて 朝吉さんがご供養を待ちわびておられたのも無理ないな と思えました。

 まだ小さいころから、兵庫屋さん という炭問屋に奉公に出ていました。
大きくなったある日、店のお嬢さまのお供で出掛けた帰りに 数人の浪人風の男に囲まれ、お嬢さまを連れて行かれてしまいました。

 どうすることも出来ず店に帰ると、数人の男衆に殴ったり蹴られたりした挙句、使い物にならないなら 切り落としてしまえ! と膝から下を斬られてしまいました。

 その頃は天涯孤独になっていましたから、どこへも行く所もなく そのまま白い目で見られながらも働き続けました。
数年後 お嬢さまはおんなのこの手を引いて笑顔で 店に帰ってきました。

 聞くともなしに漏れ伝わる話によると、お嬢さまはこころに決めた人がいたそうでその人と所帯を持つために お芝居をして駆け落ちをしたそうです。

 そうとは知らず、お嬢さまを護れなかった事で痛めつけられ 挙句に足を切り落とされてしまった朝吉さん。。。

 黙ってその場はやり過ごしましたが、やりきれない思いはずっと消えなかったそうです。


 朝吉さんに 木の実を渡して 話を聞きました。
ずっと兵庫屋さんに居て、女中だったおよねさんと一緒になりました。およねさんは気立ての良い とても働き者でお店でも大事にされていましたが、朝吉さんのことを とても大事にしたそうです。

 旨い飯を作るおんなでした

朝吉さんは そんな風に目を細めて言いました。
ふふふっ 確かに朝吉さんの体つきを見ると 美味しいものをたくさん食べさせてくださったようです^^

 朝吉さん、最初にどなたと会われますか?

お嬢さんに しっかりと話をしたい

 ということで、お嬢さまに来てもらいました。
ここで語られたのは、思いがけない話でした。

 実はお嬢さまには、縁談が持ち込まれていたそうです。でも 両親ともにその縁談には乗り気でなく、何とか逃れようと思案しました。
結果 お嬢さまをさらわれたことにして 破談にしてもらおう と決まったのです。

 何も知らされていない使用人。。。
でも 追いかけてお嬢さまを連れ戻すことがあれば、とんでもないことになるので足の不自由な朝吉さんを その日の付き人に選んだのだそうです。

朝吉さん 絶句。。。

 お嬢さまはそのことを 後で両親が浅吉さんに話したものだとばかり 思っていたそうで、浅吉さんの様子を見て 涙を流しました。
私のせいで 朝吉の足を切り落とされたなんて・・・
知らなかった ごめんなさい ごめんなさい。。。

 次に朝吉さんが呼んだのは、旦那さまと奥さま。

申し訳なさそうに二人揃って現れ、そのまま 朝吉さんの前に土下座しました。
お前を利用して 本当に悪かった。 今頃になって と思うかもしれないが、どうか 赦してくれ。

 思い返せば、あの時旦那さまは辛そうな面持ちで 私が殴られているところから去って行きなさった。お嬢さまが居なくなったことを辛がっておいでだ と私は思ったが、そうではなかったのか・・・

 その後も何日も足の傷が癒えず寝ていたが、誰も何も言わず 食事を届けてくれていた。
そういう事情があったからなのか・・・

 最後に呼んだのは およねさんでした。
およねさんは 朝吉さんに会えてうれしくて仕方がない といった様子で現れました。
そのおよねさんに 朝吉さんは聞きました。

お前も あの茶番をしっていたのかい?

およねさんの顔が曇りました。
最初から知っていたわけではなく、旦那さまに朝吉の面倒を見てやってくれ と言われた時、すべてを聞かされたそうです。

もとより あんたを好いていたから、あたしは一も二もなく あんたのところへ行ったのよ

 およねさんは 不安そうに話しました。

そうだったのか そうだったのか・・・
知らないのは、私だけだったのか。。。

 暫く 朝吉さんは唇を噛んで泣いていました。

お嬢さまも旦那さまも奥さまも ずっと頭を下げて やっぱり 泣いていました。

ねえ あんた。
わかってあげようよ 確かにあんたは足を斬られて つらい目に遭ったけど、その後は無茶な仕事もせずに楽に暮らせたじゃないか。 ねっ わかってあげようよ。。。

 およねさんの言葉に、朝吉さんはやっと頷きました。
お嬢さまにも 旦那さまや奥さまにも およねさんにも 木の実をもいで渡しました。
誰も 何も言わず ただ 木の実を食べていました。


 旦那さま 長い間旦那さまや奥さまを恨んで過ごしたことを赦して下さい。
奉公に来てから、ずっと旦那さまにも奥さまにも良くしていただいた。
あの事があってからも、出て行けとも言われず 働き者のおよねを女房にしてくださった。

何か事情があったのだ と思うべきでした。


朝吉さんは、そんな風に言って 旦那さまや奥さまに深々と頭を垂れました。

 朝吉 ありがとうよ そんな風に言ってもらえて どれだけ楽になったか・・・
娘可愛さに、お前を辛い目に遭わせてしまって 本当に済まなかった、赦しておくれ・・・


 その後はみんなで 手を取り合って ひとしきり 泣いていました。今度はお互いを理解できた 喜びの涙です。

そうこうするうちに 光の元へと還りはじめました。
最初は手を繋いで上がっていましたが、気が付くとみな 回転木馬に乗っています。
笑顔のみなを乗せて緩やかに回りながら、木馬はどんどんと上がっていきます。

 そうして やがて見えなくなりました。


朝吉さんの 一生はなんだったのでしょうか?
大切なお嬢さまを護れずに帰ってきた これだけでも 罪悪感に打ちのめされていたことでしょう。
そこへ 乱暴され 足を切り落とされ・・・

およねさんと一緒になってからも、こころの底から笑ったことはなかったかもしれません。

 旦那さまもお辛かったでしょうね。
それまでが温厚なお人柄だったようですから、旦那さまも奥さまも きっと 罪悪感を持って生きられたことでしょう。


 乱暴されたあとでも良いから、事の真相を朝吉さんに伝えていたら・・・
みんながもっともっと こころ穏やかに過ごすことができたでしょうに。。。

何にしても やっとこころの平和を取り戻した 朝吉さんや旦那さまは、いつの代か 恨み言の無い 穏やかな人間同士として すれ違われるのでしょうね。
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この記事のみを表示する15番目はゆりさん

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2014年8月4日 ブログより

15人目は ゆりさんという名の とても美しい女性でした。

巫女さんではないけれど、あんな風に舞う人 その衣装で現れました。
旅の一座の看板娘さんだったそうです。


 気が付けばゆりさんは 御伽草子を読むことがとても好きな少女でした。
旅の一座では、御伽草子や枕絵も行く先々で欲しいという人に分けていたようです。
枕絵 っておわかりですか?
浮世絵 春画 枕絵。。。

 その春画も見つけて 同じ旅の一座の少年と幼いながらも ドギマギしながら見ていたそうです。

ゆりさんは 髪もとかさず 顔も洗わず 着物も着替えずに日々を送りましたが、村に着くと総出で磨きあげられ いつもと同じ ご馳走と夜伽の繰り返し。。。



 私は何のために生れたのでしょう
こころを寄せた人には蔑まれ 挙句殺してしまいました
それなのに 私はやっぱり ご馳走をいただき 身体を開いてきました
おんなに生れたばっかりに・・・
美しく生まれたために・・・

 次の代では醜いおんなに生れたい!

ゆりさんはそう言って泣きました。
私はゆりさんに掛ける言葉を持ちませんでした。ただ 木の実を渡し、しっかりとゆりさんを抱きしめていました。

 どうしたらいいのですか?

大日如来さまに聴いてみました。

それで良い
その者が自分でわかるまで そうしておれば良い

 暫くして ゆりさんは顔を上げました。
少しこころが晴れました。あの人に会いたい・・・

そう言われたので、あの青年を呼びました。
彼はあの時、流れに身を任せながら一座から抜けることを決意したそうです。

ゆりさんが何をさせられているか、大人たちの話から次第に理解していきました。
ゆりさんが身を任せることで、一座の者はまともな食事にありつくことができて、綿の布団で眠ることができる。。。

 おとなたちは、そう言って ゆりさんのことを ありがたや ありがたや と拝んでいたそうです。
その中に、まともな食事と綿の布団で安眠できる者の中に自分も含まれていることが、とても悔しかったそうです。
その思いが、逆にゆりさんを咎めるような そんな視線になったようです。

 ゆりさんは青年の思いを知り、また一座の人の思いも知って とても穏やかな表情になりました。両親 と思っていたのは、やしない親だったそうです。その人たちもやってきました。
お前ひとりに 重荷を背負わせて悪かった・・・

父親と思っていた人が頭を下げました。
一座の皆もやってきて 同じように 頭を下げました。

 そういう時代だったのですね。。。

ゆりさんはようやく 納得したようです。
私が皆さんのお役に立てたのなら、それでもう充分です 何も言いません。
ただ一人 綺麗な着物を着せられて 美味しいご馳走をいただいて・・・

そのことで恨まれているのか と思っていました。
好きでもない殿方に身体を開くことは辛かったけれど、それよりも一座の人たちの視線が辛かった。。。


 お互いに 引け目を感じて 本当の気持ちを伝えることができなかったのですね。

その後はみなで 昔話に花を咲かせていました。やがて その話も尽きると、ゆりさんを中心に皆で手を繋ぎ、ゆっくりと光の元へと還って行きました。
日が暮れて キラキラと星が瞬く中 一筋の光となって天に向かい そして消えました。

 愛と信頼の木の下には、太鼓や笛 ゆりさんが来ていたきらびやかな衣装が残されていました。
それらを燃やしていると、どこからともなく 笛や太鼓 鈴の音が聞こえてきて ゆりさんの舞姿も一瞬見えて そして消えました。


もうゆりさんは 美しいことも おんなであることも 疎ましいとは 思っていないでしょう。
あの青年と見交わす笑顔は、とても綺麗でした。
いつ 何処で どんな風に出会っても、次の代では必ず 笑顔で過ごせるでしょう。



 年月が過ぎ、ゆりさんはとても美しい女性に育ちました。行く先々できれいな着物に着替え、村の有力者のところへ挨拶に連れて行かれるようになりました。
美味しそうなご馳走が出ても、連れて行った父親はそれを辞退して帰り、ゆりさんは後ろめたく思いながらご馳走をいただいたそうです。

 そして そのまま・・・

 翌朝一座に戻ると、仲間の視線が痛いほどだったと。

いつしか 一緒に枕絵を見た少年も立派な青年になっていましたが、あのころとは違い ゆりさんに厳しいまなざしを向けます。まるで 咎めるような 憎んでさえいるような そんな視線。。。


ゆりさんはその青年にこころを寄せていただけに、とても辛い思いだったそうです。
ある日、偶然に川で一緒になったゆりさんは青年に なぜそんな目で私を見るの? と聞いてみました。

 すると 青年はゆりさんがいく先々で村の有力者に体を与えていることをなじりました。
思わず 青年に向かっていったゆりさんは、勢い余って青年を川に突き落としてしまいました。
すぐに青年は見えなくなりました。

殺してしまった・・・

そう思ったゆりさんは、自分も川に飛び込んで死のうとしましたが 村人に発見され一命を取り留めました。それからのゆりさんは、一座の仲間の視線がそれまでよりも ずっときつく感じられ、口数も少なく、いつも下を向いて生きてきました。

 私が女だから 私が美しく育ったから・・・
だから こんな目に遭うのね。。。

この記事のみを表示する11番目はしずねさん

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2014年7月22日

 薔薇の花を希望されたのは、やはり 女性でした。
もっとも 見向きもされませんでしたが(笑)

 なぜだろう いつも和室の畳の上に皆さん 胡坐をかいたり正座をしたり、足を崩したりして座っておられる。
 で、ご自分の番になると、部屋の隅をすみません 通してください という感じで、中腰で出て来られるんですね(笑)
今夜も ご多分にもれず・・・

 でも 打掛を着て それを引きながら なので、周囲の方たちは戸惑っておられましたが何とか 一番前まで出て来られました。

 派手なお衣装なので、花魁さん? と思ったのですがそうではなく、由緒正しきお姫様だそうです。それにしても 上から目線で 傲慢な感じ。
お名前を と聞いても、言う必要はない と返事をされましたゎ(笑)

 初めての時は、大日如来さまがこの人を と教えてくださいましたが、二人目からは名乗りを上げていただいています。そうしなさい と教えられたわけではないのですが、名無しの権兵衛ではご供養したことにならないような気がして・・・

 それに その方の生きて来られた間のことを みせてもらうにも、名前を知っているということは相手を尊重する ということだと理解しているものですから、是非に と伺いました。

 しずね と渋りながら教えてくださいました。

 まだ幼いしずねさんが広い お屋敷の中庭で毬で遊んでいます。 それを邪魔しに来たのが兄さま。 毬を取り上げ ポーンと遠くへ蹴り飛ばしました。
それを見て泣き出す しずねさん。

姫さま そんなにお泣きならずとも・・・ と声を掛けてきた 家臣。その家臣に しずねさんは幼心に惹かれていたそうです。

 場面変わって しずねさんがお年頃の様子。14~5歳なのか・・・
柱の陰で様子を伺っています。
大好きな家臣が妻を娶ることになりました。しずねさんは悲しくて 寂しくて ひとり部屋で泣いていました。
そこへ入ってきたのは 兄さまです。 
しばらくは しずねさんを慰めていたのですが、どういう拍子か兄さまはしずねさんをおんなとして抱いていました。

 そしてしずねさんは身籠り、母さまの知るところとなりました。結局 流れてしまいましたが、しずねさんはその後 嫁いでも 身籠ることはありませんでした。
夫はずいぶんと年が離れていましたが、しずねさんは自分が身籠らなくても 夫に側室を持たせることは決してしませんでした。

 結果 夫が亡くなるとお家断絶。。。
しずねさんは 兄さまの屋敷へと戻り、勝手気ままに暮らしたそうです。

 どう? 私の生き様は・・・

高飛車に そう言いました。

お寂しかったんですね・・・

そう言った途端、しずねさんは泣き崩れました。先ほどの上から目線も 高飛車な態度もすべて消えて、ただただ 泣いていました。

木の実を差し出して その後はしずねさんから話を聞きました。

旦那さまは、私を大切にしてくださいました。
でも 私は殿方は私を裏切るものだ と思っていましたから、まわりのものが何と言おうと側室など赦せることではありませんでした。そのことについて 旦那さまは何も言われませんでしたが、私は旦那さまが何も言われないことを良いことに、自分の我を貫いたのです。

そして お家断絶。。。
既に旦那さまは、亡くなられていましたが申し訳ないことをしたと思います。。。

 ずいぶん しおらしくなられました(^_^;)

どなたをお呼びしましょうか?

旦那さまを・・・

 満面の笑みで しずねさんの旦那さまが来られました。とても嬉しそうです。
しずねさんは旦那さまの手を取ると、しっかりと目を合わせ 申し訳ありませんでした と言われました。


 旦那さまはとても 不思議そうなお顔です。
旦那さまの好意を良いことに、私は我が儘放題で旦那さまを苦しめました、赦して下さい

しずねさんの言葉を聞いても、不思議そうなお顔のまま。

私はそなたが連れ添うてくれて、幸せじゃった。苦しんだことなぞ 一度もないぞ

そんな風に言われました。しずねさんは旦那さまに縋りついて泣きじゃくっています。

もう良い それほど泣かずとも良い

旦那さまはどこまでも お優しい。。。

旦那さまにも木の実を渡し、次は父さまと母さまを呼びました。
いまなら 父さまのお気持ちがわかります しずねさんは そう言って木の実を渡しました。
母さまも黙って 静かに微笑んだまま 受け取られました。

 そして 家臣。
姫さまの思いは、幼いころの憧れだと思っておりました そう言うと、嬉しそうに受け取りました。

最後は兄さま。
お互い 気まずい雰囲気のまま 木の実だけが先に手渡されました。
何も言わなくても お互いに理解しあえたようです。

 兄さま 旦那さまが亡くなった後は兄さまのお屋敷で無茶をして 申し訳ありませんでした しずねさんはそのことを詫びました。

いやいや あれは罪滅ぼしだと思っていた。しずねには 申し訳ないことをしてしまった・・・

 私は殿方に対して、こころを閉ざして生きました。旦那さまの思いにも しっかりとこころを閉ざしたまま 自分のことだけ考えて生きてしまいました。
次の代で もしも 出会うことがあれば、笑顔でお目にかかりとうございます。。。

 しずねさんは 旦那さまの元へと戻ると しっかり手を取り合って還っていかれました。
ご両親が続き、家臣とその家族が続き、兄さまは一番最後です。

どこからともなく 鳳凰が現れて しずねさんたちを案内しているようでした。

すべて終わった後に今夜は檜扇が残っていました。
しずねさんがずっと持っていたものです。
前回の松葉づえと同じように 燃やしましたが、煙はしずねさんを追っていくことはありませんでした。 静かに燃えて 静かに灰になりました。。。

 今でこそ 女性が思うままに生きているように見えますが、それでもこころを閉じたまま生きている女性のなんと多いことか・・・
私も 自由闊達に生きていたつもりでしたが、しっかりとこころを閉ざしていました。

自分を愛し、自分を信じて ご供養もさせていただいている今、ひとりでも良いから 耳を傾けてほしい と思います。

鏡を見て 私って綺麗! と言う。

それが自分を愛する始まりでした。嘘っぽいな と思いつつ、最初は怒ったように 綺麗ですよ と鏡にあかんべえをする勢いで言っていました。
でもね、3日も経つと顔が変わってきていることに気が付きました。


 しずねさんの生きたころには、こんなことを教えてくれる人はそばにいませんでした。
しずねさんは、こころを閉じたまま 自分のこともほかの誰のことも信じないで生きていましたから、せっかくの美しいお顔もまるで鬼のように見えました。

 旦那さまに縋りつくしずねさんは、童女のようであり 美しい天女のようにも見えました




この記事のみを表示する10番目は竜二さん

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2014年7月20日 ブログより

 今日はお若い男性でした。私の好みかい? と笑ったりしますが、どうやら思いを残している当時の姿 なのかもしれません。

 最初はジョウジだと名乗り、ランニング姿で走っている場面をみせられました。
でも 何だか話がややこしくなってきたので 整理させてもらったら、実は自分は竜二だと言われました。

 酪農家の息子さんで、かなり裕福だったようです。
昭和の初期のお話のようでした。
竜二さんは自転車に乗って中学校へ行くのですが、その途中 いつも走って学校へ行くジョウジさんを抜いていました。

 特に親しい友人ではなかったようですが、幼馴染。。。

竜二さんはジョウジさんをすごいな といつも憧れていたそうです。

そんな時、竜二さんは恋をしました。おとなしげな女学生に夢中になりましたが、ある日その女学生が街の不良に囲まれているところへ出くわしました。
女学生の困った様子を見て、助けようとした竜二さんはボコボコにやっつけられてしまいました。

 そこへジョウジさんが通りかかったのです。
思わず 声を掛けて 助けてくれ! と手を伸ばしました。

その後はご想像通り、ジョウジさんも街の不良にボコボコにされ 結果陸上の試合にも出られなくなり、やがて引っ越してしまいました。

竜二さんはそのことをずっと忘れられなかった と言います。
あの時 ジョウジに声を掛けなければ、自分一人がけがをして それで終わったんだって。
ジョウジに悪いことをしてしまった あれからどうしたんだろうか とずっと気に掛かっていたそうです。

 竜二さんに木の実を渡し、食べてもらいながら話を聞きました。

彼はとても長生きしたそうです。結婚したお相手は、あの時の女学生さんではなかったそうですが、幸せな人生だった と言います。だからこそ ジョウジに申し訳ないことをした と気に掛かっていたのでしょう。

 では ジョウジさんを呼んでみましょう

ジョウジさんはいつものランニング姿で走ってきました。
そして 竜二さんを認めると 黙って止まりました。

 竜二さんは何度も ジョウジさんに申し訳なかった と言いましたが、ジョウジさんは意外なことを口にしました。

あの時 骨を折ったから大会には出られなかった。でも 街を出たのはそれが原因じゃない。
ひとりで俺を育ててくれていた母が、病気で死んでしまったんだ。だから 親戚を頼ってこの街から出たんだ。

 そしてその後は、陸上選手として活躍することもなく それでも親戚では大切にされて幸せに生きた と言いました。

やっと竜二さんの顔に笑顔が浮かびました。

 話をしているところへ 静かにやってきたのはあの時の女学生さん。
あの時はありがとうございました。私のために皆さんがお辛い思いをされたんですね・・・
と詫びましたが、もう竜二さんもジョウジさんも 笑顔で楽しそうに昔話をしています。

もちろん 女学生さんにも 木の実を渡し、あの時ボコボコにした街の不良にも 木の実を食べさせてやろう と言いました。

 何人かがやってきて、やっぱり 竜二さんジョウジさん女学生さんに 悪かった と詫びを言いました。あの後、真面目になったものもいれば、愚連隊に入って刑務所に出たり入ったり という仲間もいるそうです。

 若かった というだけでは理由になりませんが、それでもみんな 笑顔です。
そして みんなで 天に向かって還っていきました。
賑やかに 笑い声をあげながら・・・

 しーんと静まり返った愛と信頼の木のある野原では、瞬く間にまた 木の実がいっぱい実っていました。

 ふと見ると、古びた松葉づえが残っていました。

私はその松葉づえを燃やしました。 
まるでジョウジさんを追いかけるように、煙が天に昇っていきます。

ありがとう

かすかに ジョウジさんの声が聞こえました。



 ジョウジさんに 陸上選手としての能力が備わっていたのかどうか それはわかりませんが、毎日一生懸命走っているジョウジさんを見ていた 竜二さんにはとても辛い思い出になっていたのでしょう。

 幸せに暮らしたからこそ、ジョウジさんがその後どうなったのか とても気に掛かっていました。



 ありませんか?
そんな思い出。。。

些細なことなんだけど、私の一言であの人は傷ついたよね

あの時 ちょっとした悪戯心だったんだけど、あいつ 泣いていたよな

そんな 軽い気持ちでしたことでも、相手にはとても大きな変化になってしまうこと ありますよね。
愛と信頼の木の実は、そんな時にもお役に立ちます。

あれ お役に立ちます って書くと、ちょっと変な感じ( ´艸`)


 その時の彼や彼女を思い出して、ごめんね と愛と信頼の木の実を差し出してみてください。
きっと お相手は受け取ってくれますよ^^
そして 一緒に食べながら、あの時 あんなことになるとは思わなかったんだよ と赦しを求めてみてください。

逆に 木の実を差し出されて、同じように言われたら もう忘れたよ と言うよりは、あの時はそうすることしかできなかったんだよね 気にしていないよ と言ってあげてください。
赦す ということ。
赦された と実感すると、とてもこころが安らぎます。


 事故の後、アトラスくんは無言でした。
ごめんね と言っても、返事がありません。

木の実を渡して、ごめんね 痛い思いをさせちゃって 本当にごめんね と謝ったら、アトラスくんは木の実をほおばった後 言いました。

オネエサンは? オネエサンは大丈夫なの? 怪我をしていない? って。
運転しながら、涙が滲みました。

私は大丈夫。怪我はしていないよ 君の方がひどいことになっちゃったじゃないの。。。

良いんだ 僕は治してもらえば元通りになるから^^

アトラスくんはそう言って 私に木の実をもいで渡してくれました。

修理には40万弱かかるようで、年季の入ったアトラスくんは 元通りにはなれないかもしれません。


ごめんね。。。

私を護ってくれて ありがとうね。。。